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[025]
Yak/Shetland wool/Nep

「重い、厚い」わたしたちのプロダクトにはこの言葉がつきまとう。
ワークウェアには重量感のあるものが多い。名品として現在でも愛用されているものが誕生した時代、原材料や織機などのテクノロジーが今のように発達していなかったからだ。
現在ではテクノロジーによって軽さや機能など様々な選択肢の中からプロダクトを開発することが可能だ。
時代の流れに逆らっているつもりはないけれど、洋服も、音楽も、家具も、家の中を見渡すと古いもの、重量感のあるもので溢れている。単純に「好き」なのだ。
その「好き」なアイテムに合わせる想定で企画をしていくので、自然とわたしたちのニットウェアも重量感のあるものが多くなるようだ。
ヤク、シェットランドウールにシルクネップを掛け合わせて作った新しい糸のシリーズは、そんなニットウェアの中では最もライトな肉感。
最初に念頭に置いたのはベーシックなシェットランドウールのクルーネックセーター。
若かりし頃のミック・ジャガーや、アンソニー・パーキンスが着ていたようなシンプルでなんということのないスタイルが好きで、いつかそんなイメージのクルーネックセーターを作りたいと思っていた。といっても、そうしたプレーンなセーターは世の中に存在する。
それならばと、色々素材の掛け合わせを試行錯誤し、わたしたちなりのプレーンなセーターを制作したのがこのシリーズ。
サックスブルーや何色ともつかないスモーキーな淡い色など、紡毛の良さが生きるカラーをイメージして、色によっては原料のヤクやシェットランドウールを別注で制作。
ツイードっぽい表情を加えたいとシルクネップをミックス。渋すぎないようにネップのカラーはちょっとポップなニュアンスになるよう組み合わせている。
プレーンなセーターをイメージしてサンプルを制作したものの、プレーンすぎて納得がいかず、結果やはり少し癖のある仕上がりとなった。
ちょっとアクセントに加えた配色部分は「捨て糸」をイメージしている。「捨て糸」は本体を編み出す際に適当な残糸を引きそろえて数コース編む部分のことで、最終的には解いて本体を仕上げるので、製品として見る事はないのだけれど、工場やデザイナーにとってはお馴染みのものだ。
最初のサンプルがしっくり来なかったのでひっくり返して裏面を表にしてみたり、風合い直しをしてみたり、そんなこんなで仕上がった「自称プレーンで薄手のセーター」。
アウター並みに暖かいわたしたちのアイコンモデルの一つ「hoodie balaclava」もアウターインに着やすいよう加えてみた。
いまいちだったファーストサンプルは既にOが着用して実証実験をしている。
シルクネップのドライ感が生きていて、さらっとして着心地が良いそうだ。
大きな顔がすっぽり隠せるフードを、小顔効果を狙ってか、なぜかよく被って嬉しそうにしている。顔回りの着心地も良いらしい。