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[016]
Yak/Shetland HAND KNITTING Lopi sweater


新作の企画として今回最初に試作をスタートしたのが手編みの柄物、求心状に輪で柄を編みこんでいくロピーセーターだ。
一般的にはノルディックセーターと呼ばれることが多いかもしれないが、ノルディック(北欧の)という意味にはスウェーデン、ノルウェーなど他の国々も含まれるので、ギザギザした幾何模様を求心柄に編みこんでいくこの手編みのセーターはアイスランドの伝統的なもので、Lopi sweaterと呼ばれている。
輪編みでヨーク部分に、放射状に目数を減らしながら柄を編みこんでいく手法と、大胆な幾何模様が特徴的だ。
いつものように「手編みで柄物やりたいね」とお気楽にOが呟いたのがきっかけで試作がスタート、素材はいくつか試編みをして一番存在感があり、自分達にしっくりくるヤクとシェットランドをミックスした糸に決定。伝統的なものよりも、わたしたちらしく存在感とボリュームのある厚さに仕上げることにした。
さて、柄をどうしようかと色々な資料を探し、試案の日々が始まる。
伝統的なセーターは柄が細かかったり、素朴だったり、ぴったりこない。資料を見ながら、またOがお気楽にこれよりこうだったらいいな、とかもっと大胆な感じで、などディレクター調に言ってくる。
そんなアイドルディレクターが発するサジェスチョンのような漠然としたものを受け止めながら、実際オリジナルで柄を組んでいくのは数字が苦手なわたしBにとっては地獄のような日々であった。
編み物の製図をやったことがある人にしかわからない苦しみなのだけれど、柄の目数と減目の位置を合わせていくのに結構な労力が必要なのだ。
ようやく柄組みしたものを、何日もかけてヨーク部分をぐるり編み終えて確認してみようとOに見せた所、またお気楽に「この柄インディアンぽくない?」とダメ出し。
人の苦労を全く顧みないアイドルディレクター。頭の中で火曜サスペンスのテーマが鳴り響き、あやうく石焼ビビンバの石鍋で殴り殺す寸前であった。
その後も3~4種類柄を試作、殺人寸前の試行錯誤を何度も繰り返し、ようやく出来上がったオリジナルのロピーセーター。
編み手さんの苦労をひとしお感じることもできた、ということで何とか心の平穏は保てている。
恨みつらみを乗り越えて出来上がったこのプロダクトは、なんだかとても愛おしい。
どうか末長く愛用される一着になりますように。