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Standard products for Autumn/Winter 2023


いきなり音楽の話になるが、ファーストアルバムには好きなものが多い。
粗削りだけれど勢いがあって、「これがやりたかった」という感情やそのミュージシャンの底にあるエッセンスが感じられるからだろうか。原石の輝き、という表現もあてはまる。
名盤と呼ばれるものはファーストアルバムよりも後、やりたいことや特性を磨き上げ、脂ののった時期に録音されたものが多いかもしれない。
ただ、初期にはその時にしかない独特の良さがある。
わたしたちのファーストコレクションを好きな音楽に並べて例えるのは恐れ多く恥ずかしい話だけれど、自分達の予想を超えてお客様からの反響があったモデルも多く、「これがやりたかった」という無邪気な想いが伝わったのかもしれないと思ったからだ。
そうした初期衝動はベテランになっていけばいくほど薄まってしまうのが常だけれど、その無邪気さ、忖度のない感覚は忘れたくないと思う。
そんな思いを胸に、わたしたちの原石でもあるモデルの中から手編み2素材、手横2素材を継続している。
手編みの1素材目はヤクとラムウールをミックスしたカウチンセーター、求心編みのタートルセーター。継続色のミント、ブラックに加えて、ツイードのようなカラーをイメージした新色のマロンを用意した。これも沢山の色を試作した中から選んだ色だ。ベースとなるヤクの色も別注で制作している。素材やモデルについてはproduction notes No.003を参照願いたい。
2素材目はキャメルとカシミヤをミックスしたクリケットセーター。カシミヤ原料の値上がりの激しさに躊躇したけれど、店頭での評判が良く、継続希望のお問い合わせも多かったので、色も型もそのまま継続することにした。production notes No.003参照
手動で編み機のキャリアを動かして編んでいく手横編みの1素材目は、強撚のシェットランドウール。最初に作った時から定番にしたいと決めていた素材。毛玉にもなりにくく、家庭洗濯もでき、形状変化も起こりにくい、わたしたちが目指すUtility knitwearを体現するシリーズだ。これもproduction notes No.004で素材、モデルの詳細は記されている。
2素材目はヤクとシェットランドをミックスした糸、手編みの新作ロピーセーターでも同じ糸を使っているが、手横の方はゆるく編んだ編地を縮絨(洗いの工程)でぎゅっと縮めて圧縮する手法で仕上げたものだ。Brushed Yak/Shetland woolと名付けている。production notes No.006参照。
モデルはフーディーと畦のタートルネックの2型に絞り、全て新色で展開している。
このBrushed Yak/Shetland woolシリーズは、縮絨の工程が非常に難しく、量産でもかなり苦労し、何度も自分達で洗い直しなどの経験をしたので、もうやめようと思ったけれど、苦労して仕上げた商品は手前味噌ながら他にはない良いプロダクトだ、と痛感したので頑張って継続しようと決めた。
どれも、好きだという無邪気な想いでつくられた大切なプロダクトだ。