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[022]
Products of chance

お取引先店舗からのお誘いで昨年イベントを行ったのだけれど、その時産まれたプロダクトが残糸を使ってB自らが編んだ手編みの小物。
手編みの項で述べたように、糸の試作を自ら行うわたしたちのアトリエ(というか自宅)には試作や量産の過程でどうしても残ってしまう糸が沢山保管されている。
イベント用に、リビング兼作業場の足元にはちきれんばかりにある試作用の残糸を使って小物を編んでみたところ、中々面白い色目、素材感に仕上がったので、イベント終了後にも時間を見つけてコツコツ編み続けたニットアクセサリー。
使う糸は半端に残った少量の糸が主なので、ヤク、ウール、カシミヤ、キャメルなど混率も色も量もバラバラ。それをその時の感覚に任せて何本も引き揃えて編んでいく。
何となくの仕上がりイメージを考えながら、即興で色を切り替えたり、編み柄を入れたりしていく作業は自由で楽しい。何一つ楽器の演奏など出来ないのだけれど、即興演奏とはこんな感じだろうか。
一つの残糸を使いきると、空の土台のコーン(糸が巻かれている土台)が現れる。空のコーンが出るたびにゲームのステージをクリアしたような嬉しさがあり、元々片付けや掃除に同様の喜びを感じるわたしBにはうってつけの創作作業のようだ。
編むという行為は、無心になれるし中毒性があり、つい夢中になって他の作業をおろそかにしてしまう危険性もある。
今日の晩御飯は何だろうかと考えていそうなOの顔を見ると舌打ちしたくなるような中毒性だ。止め時が難しいのが厄介だ。
即興演奏で生まれた「偶然の産物」だから再現性は無く、全て一点物なのだけれど、このニュアンスをどうにかしてインラインの企画に盛り込めないかと考え制作したセーターがある。「odd stripes」と名付けたタートルネックセーターがそれだ。
手横の工場でどうにか編めるようにと、糸を工夫して出来るだけ色の切り替えを少なくしたけれど、26回も糸を細かく切り替えて編む複雑怪奇なグラデーションボーダーを、嫌と言えずに何とか引き受けてくれた工場に感謝。どうぞ量産もお願いします。