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Paper/High twisted wool
手編みと同様に、手横(Hand flame knitting)と呼ばれる機械編み(人力でキャリアを動かして編む手法)のニットも、今回のテーマは「ドライタッチ」。
和紙を軸に企画をスタートした。
和紙の良さを生かすため、Oは様々な素材との掛け合わせを試みているが、ドライなタッチ、サラサラとした肌触り、程よい張り、コシが春先の気候に最適とOが絶賛する(自画自賛)糸「和紙×英式梳毛ウール強撚」を使うことに決めた。
梳毛ウールの紡績方法には大きく分けて仏式製法と英式製法がある。
より膨らみのある糸を作ることができる英式梳毛ウールを強撚にし、和紙繊維と掛け合わせることでお互いを補い合う、非常に良くできた糸だ。
この糸の特性を生かしたSlopeslowらしいアイテム。テーマ、素材は決定した。
Full needle(総針)と呼ばれる最も目の詰まったゴム編みは、減らし目などの成型をしながら編む場合、目を詰めて編むのが難しく、自動機よりも手横の方が綺麗に出来ることが多い。
糸にキックバック性もあるし、せっかく手横で作るのであれば総針組織が良い、総針ならボーダー柄のマリンセーター(Breton stripes sweater)が良い、と連想ゲームのように企画を進めていくのがわたしたちのやり方だ。
総針の肉感を生かし、ジャケット型も作ることにした。デザインのモチーフにしたのはFFAジャケット。Future Farmers of Americaアメリカ合衆国学校農業クラブ連盟=略してFFA、背中に付けられたFFAのワッペン、チェーンステッチで刺繍された州名、ネイビーのコーデュロイが特徴のブルゾンジャケットだ。
といっても、モチーフにしたのは全体のシルエット感や、ポケットの形、袖口の仕様などで、ワッペンや刺繍も入れずに地味、もといシックに仕上げている。
ポケットの丸い形がちょっとした愛嬌を加えてくれるので、真面目、クールになりすぎないところが気に入っている。
マリンセーターはコットンやウールのものよりも、シーズンレスに長く愛用できる良いセーターに仕上がった。
ジャケットは、コートやブルゾン代わりにも着られるし、ニットならではの気軽な着心地、何よりも和紙の良さを感じるドライなタッチが良い。
春物として企画をしているものの、手編みの項で前述したようシーズンをカテゴライズする必要がなければ、シーズンレスなアイテムとして真夏以外は愛用できそうだ。
完成度の高い素材なので、ブラッシュアップをしながら継続していこうと思っている。
今回この素材のみ、元の糸のカラーを生かしたベーシックなカラーのみで展開しているが、次回制作に向けてはまたキッチンでコトコト製品染めの実験を、と目論んでいる。