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Hand Knitting

ニット製品に長く携わっていると、街で、お店で、見かけたセーターをつい分析してしまう。
どんな素材で、どんな手法で作られているのか。
ニット製造においても日進月歩でテクノロジーが進化している現代、かつては手編みでしか表現できなかった手法が機械編みで実現できるようになり、また、最新の機械でしか表現できない手法も多く見かけるようになった。

それでも、一見して「あ、手編みだ」と感じるセーターに出会うことがある。
接ぎ目や目の増減、柄など手編みのならではの手法を使っていることも勿論だけれど、人の手で編んだものにしかない「ゆらぎ」があるのだ。
自身の好物である「コロッケ」で例えると、生産ラインで作られたものは味にムラはないが、家で手作りしたものは芋のつぶし加減や野菜の大きさにムラがあったりする。ただそのムラがたまらなく美味しい。そんなニュアンスだろうか。

もう一つ手編みの良さがある。糸を解いて編みなおしが出来る事だ。
わたしたちが作ったサンプルも解いて編みなおしをして、を繰り返して制作している。
サスティナビリティというキャッチフレーズのように使われるようになった表現は好きではないけれど、そういうことなのだ。
手間暇かけたのに残念に仕上がったセーターも、編みなおせば原料は無駄になることがない。
家族から、友人から受け継いだセーターを、メンテナンスをしたり編みなおしをして大切に長く着続けることも出来るのだ。

Slopeslowのハンドニッティングセーターは、made in Japanにこだわっている。
現在日本で、世界で流通している「手編み」のセーター、製品の多くは人件費の安い国、地域で作られている。製品として一枚のセーターを編む時間=コストがそれだけかかるからだ。

それでも日本国内で作るのには理由がある。
一つは編み手さんにしっかりと意図を理解してもらい、丁寧に、納得いくまで時間をかけて作りたいこと、そして小規模で無駄のない生産をしたいからだ。
そして、減少している編み手さんのネットワークを少しづつ築いていき、虫食い穴の補修や丈直しなどのメンテナンスも可能にしたいと考えている。
大量生産とは真逆の、「小規模でしか出来ないこと」の可能性はここにもある。