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Hand Knitting Sweater by Slopeslow
Slopeslowをスタートするにあたって最初に試作を始めたのが手編みのセーターだ。
手編みならではの良さを最大限に生かすため、何種類もの素材を試作しては編地を編んで、縮絨(洗いをかけて素材の風合いを最大限に生かす工程)して、を繰り返し、今回たどりついたのが2つの素材。
日本国内の編み手さんに一枚ずつ編んでもらい、縮絨など仕上げは自分達自ら行っている。
うどんやパスタのゆで加減にもそれぞれ最適な状態があるように、素材を生かすも殺すも縮絨次第。素材や編地によって最適なレシピが必要なのだ。
「小規模でしか出来ないこと」の可能性を楽しむこの方法は、わたしたちのコンセプトでもある。
【Yak/Lambs multi ply HAND KNITTING】
カシミヤに近い肌当たりのやさしさと上質さを持ちながらも、粗野で強い雰囲気に仕上がるヤク。昔から好きな素材の一つだ。
がっしり目の詰まったヘビーウェイトセーターに仕上げるため、縮絨加減によって繊維が絡んで保形性が出せるラムウールをかけあわせてつくった素材。
カーキやセージグリーンのワークパンツに合わせて作ったmintカラーは、糸を作ったOが悲鳴を上げるほど何色もの色を掛け合わせ、奥行のある色味に、ブラックにも少しスパイスを加えて深みのある色に仕上げた。
ヤクの上質感とラムウールの保形性を生かしてつくった求心編みのタートルネックセーターとカウチンセーター。
手に取ると凄い重量感だけれど、しっかり目を詰めて自重で垂れないように編んでいるので、着用すると重さは感じにくい。何よりも、着た時の張りのあるフォルムが抜群に仕上がっている。
タートルネックは輪編みで編んでいるので接ぎ目がなく、立てて着ても、折り返しても良い。
カウチンセーターはzipを閉じるとハイネック状に首を覆うように、モダンなアレンジを加えている。
どちらのデザインも、あえてコンパクトなサイズ感に仕上げたXSと、存在感のあるフォルムを生かしたMの2サイズ展開。
限界まで目を詰めて編んだニットは、編み手さんから「腱鞘炎になるから勘弁して」と苦情がきたのは裏話。
【Camel/Cashmere Cable HAND KNITTING】
ケーブル柄の手編みと言えばアランセーターを思い浮かべる人が多いはずだ。
ケルト文化をルーツに、一つ一つの柄にも意味があり、家紋のように、また個人の思いを込めて多様な柄が組み合わされ作られる伝統的なセーター。
柄を編みこんでいく楽しさもあり、編み物を楽しむ人たちにもとても親しまれている。
けれどもわたしたちが選んだのはもっとシンプルな、リブ状にケーブル柄を編みこんだセーター。
手編みといっても素朴過ぎず、オーセンティックで飽きのこないセーター「クリケットセーター」と「タートルネックセーター」を作ることに決めた。
「手編み」でなくとも制作できる柄だけれど、手編みにした理由がある。
それは「ケーブル柄の立体感」だ。
編み物をしたことがある人にしかわからない事なのだけれど、「目を詰めた編地」とケーブルのような「交差柄」は相性が悪い。編めるけれど大変なのだ。
機械編みの場合もっと相性が悪い。限界があるためどうしても機械編みの場合ケーブル柄がフラットに仕上がりやすい。
「ケーブルの立体感」が生きるよう、様々な素材で何枚も何枚も自分で編地を編んで、この素材に行きついた。
獣毛のCamelとCashmere、どちらも上質で良い素材の反面、自重で垂れやすく、目を緩くするとだらしのない形に仕上がりやすいが、混率や糸の撚糸、太さを試行錯誤して、ケーブル柄の表現に丁度よいバランスに仕上げた素材。
Camelのカラーを生かしたベージュトーンのカラーと、奥行のあるネイビーカラーで、ありそうでない独特のカラーリングに。
タートルネックは求心編みのセーター同様、輪編みで接ぎがないので立てても折り返しても美しい仕立て。個人的には折り返さない着方が好み。