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[008]
Garment dye

和紙を軸にコットンやウールなど色々な素材をミックスして糸を作っていくと、色の表現が難しくなる。
糸にしてから染めると原料によっての染着差でムラが出やすいが、異素材の組み合わせならではの面白さは出る。
綿、ウールはそれぞれ染める時の助剤が違うし、和紙は染料を吸い込みやすいので、綿やウールと同じ色に染めても少し濃淡が出やすいらしい。
どのような染着差が出るかは染めてみないとわからないので、試しに編んだ編地をキッチンでコトコト染めてみると異素材の微妙な染着差がニュアンスを生み、良い感じに仕上がった。そうなると実験は止まらず、作った素材を片端から染め始め、大量の染め見本が仕上がった。
そうした実験を繰り返す中、今回のテーマ「ドライタッチ」に加えてサブテーマが「ガーメントダイ(製品染め)」となった。
半分遊びの中から生まれたものではあるが、少量でも色展開がしやすい製品染めは、小規模生産の可能性を探るわたしたちのスタイルと相性が良い。
また、形にしてから高温で染める製品染めは、ぎゅっと目の詰まった仕上がりになり、タッチもよりドライに仕上がることも今回のイメージに合っている。
ニットだけでなく、今回オリジナルで作ったジャージー素材も製品染めの面白さを生かして制作することに決めた。
編地や試作と違い、サンプルや商品は染工場に依頼しているが、今回renew(古着のワークウェアのリメイクライン)のアイテムや雑貨にも自ら染めたものがある。
しみや汚れなどが気になる古着が別の顔で蘇るのも嬉しいものだ。
しばらくキッチンでの染めブームが続き、自分達の着古したTシャツを染めたりしているうちに染め専用にもっと大きな鍋が欲しくなり、ちょっとしたラーメン屋が開けそうな鍋を購入。
ぎりぎりキッチンのガスコンロには載せられるが、シンクで洗うのにも乾かすのにも難儀な大きさ。
サンプルの試作で、家でニットの縮絨をするたびに大きな洗濯機や洗い場が欲しいと思うのだけれど、今度は大きな厨房が欲しくなる。
そう思ったところで広い場所に引っ越すわけにもいかず、染めの際にしか使われない巨大ラーメン鍋は、置き場所に困り寝室のベッドの脇に鎮座するはめになった。
わたしたちの現状では悲しいかな、「美しい暮らし」と「手間暇をかけたものづくり」の共存は遠い。