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Dry wool/Interlock & Waffle


Oと2人で古着屋巡りをしていて見つけた、恐らく40~50年代と思われるアメリカ製のウールカーディガン。素材や編み組織、色やメーカーは違うけれど、共通する特徴があるカーディガンが複数見つかった。以前資料として購入していたものにも同様の特徴があり、固有の名称は無さそうなものの一つのジャンルとして掘り下げることができるものであった。
「粗野なガサガサのウール素材」「脇接ぎ無しの丸胴編み」これは同年代のミリタリーセーターでも見られる編み方で、素材の方向性も近い。
襟~肩の伸び止めのボロ隠し仕様や太い前立て仕様、横穴に開けたボタンホール、ボタン位置や間隔が特徴的で、どのカーディガンにも共通した要素だ。
この名もない「old style cardigan」の研究からはじまり、新たに定番となり得るようなSlopeslowなりの「old style」のプロダクトを開発したいというのが今シーズンの命題となった。

ミリタリーセーターに使われていたことが示すように、当時は工業製品として量産型のポピュラーな編み機であったのだろうが、この編み方ができる機械を現在探すのは非常に難しく、同じ編み機での再現はあきらめざるを得ない。
吊り編み機を使ったスウェットやデニムなど、当時の作り方を継承、再現できるアイテムも多いけれど、ニット製品に限っては時代のニーズに合わせてそうした背景は淘汰されてしまった。そうしたものを作りたい、買いたいというニーズが無いからなのだろう。
それでも、どうしたらこの雰囲気を再現できるのか試行錯誤を繰り返し制作に乗り出した。
まずはイメージするゲージと質感に合う番手の紡毛糸を探し、それをさらにカリカリに強撚してオリジナルの糸を作成。ニット工場へ出向いて編地をいくつか試作してもらい、糸と編み組織は決まったものの、太番手のスパン糸での振りミシンやアタッチメントを使った衿や前立てのジャージー仕立ての縫製など、ニット工場ではこの雰囲気には仕立てられないということになり、編み立てと縫製を別のところで行うことになった。
多くのアパレルがOEM会社や振り屋さんに任せてやってもらう業務を、自らが担うのは大変面倒くさい。ただ、ものづくりにおいてその過程、工程を知り、どうすべきかを考えるのは本来必要なことで、その積み重ねが経験となり知恵となる。タイパもコスパも悪いけれど、それは確実に血となり肉となるのだ。
そんな様々な過程と執念を経て開発した新しいプロダクトを「Dry wool」と名付けて、インターロック(スムース編み)とワッフルの編地の2シリーズで制作した今シーズン。
時代のニーズに取り残された「old style」のセーターたちが新たな定番になることを願って。