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[009]
Cotton/Paper/Wool HAND KNITTING

シーズン最初の企画は必ず手編みからはじめる。
仕上げたいイメージを2人で構想し、Oが糸を試作、Bが試編み、そして今回は鍋で編地を染める。これだ、という素材感にたどりつくまでの時間も結構かかる。
糸を作ってからサンプルを編み手さんに作ってもらうのだが、手編みとなると1か月は必要だ。時間を要する分、手直しや変更も気軽には出来ないため、試編みの作業とその時点での検討がとても重要なのだ。
春物とは言え、手編みの良さを生かしたいと重量感、存在感があり、触ったことのないような質感、ドライな肌触りを目指して素材のベストマッチを探っていった。
コットンはペルー原産でウールのような膨らみがあり、尚且つかさっとした粗野な質感が特徴のものを選び、和紙を掛け合わせてみたが、重厚感、保形性が弱い。
キックバック性を持たせる為に上質なラムウールを強撚したものを加えると、製品染めの色目にも奥行が出て良い雰囲気になった。
ファーストコレクションで作った手編みのカウチンセーター、クリケットセーターが自分達でも気に入っているので、季節やシチュエーションが違っても着られるよう、あえて目新しいデザインではなく、同じデザインベースでの可能性を追求しようと決めた。
カウチンセーターは重量感がないとサマにならないので、かなり厚手だけれど、和紙独特のドライなタッチが生きたとても良いプロダクトに仕上がった。
春らしくベストとカーディガンにしたクリケットセーターは、コットン100%のものだと縦方向に伸びてしまい、保形性に欠けるのが難点だが、張り、こしのある和紙と膨らみのあるコットン、ウールによるキックバック性が上手く作用して、立体感のあるフォルムに仕上がった。保形性と和紙の質感のおかげで肌離れも良く、着ていて気持ちが良い。
今までになかったものを作りたいね、と話しながら制作しただけあって、春物でこんなに重量感のあるニットは見たことがない。
それは恐らく売れ筋になり得ないからだ、ということはわかってはいるけれど、自分達はとても気に入っている。「小規模でしか出来ないこと」を掲げるわたしたちにしか作れないアイテムかもしれない(笑)。
ファッションの世界では、春夏、秋冬、と勝手にシーズンを区切って商品をカテゴライズしてしまうけれど、真夏以外、長いシーズン愛用できそうだ。
広い世の中、自分達と同じ好みの人が数人でもいれば良いな、と願っている。