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[011]
Cotton/Paper Overdyed

Oと2人で街に出かけると、「このディテールはどうやって作られているのか?」「この組織はどうなっているのか?」「この素材感を出すにはあの糸なら出来るかな」など、常にニットの作りや素材が気になってしまい、商品を見ながらあーだこーだと検討を始めてしまう。
お店の方にとっては本当に迷惑な客だ。
お店だけでなく、電車の中や街中で見かけた物(人が着ている物)でも同様だから始末に負えない。
そんな中見つけた古着のカーディガン。手横に向いているこの編み組織が良いね、と編地の方向性は決まった。
さて、糸をどうするかと和紙とコットンの掛け合わせをベースにいくつか試作を重ねてはみたものの、今一つパンチに欠ける。
ドライなタッチの素材感は合格。色でもっと雰囲気を出せないだろうかと、手編み同様に製品染めでやることにした。
コットンと和紙の掛け合わせなので、ウール混よりも色の染着差や奥行は出にくい。
コットンの糸自体に色の奥行があるものを使えばよいのでは?と考え、スウェットなどのジャージー素材で使われるグレーの杢糸を使ってみることにした。
リサイクル綿を使ったムラ感のある表情が特徴の糸だ。
糸が出来ると編地を工場に作ってもらい、またキッチンでの染め実験の日々が始まった。
微妙なトーンや濃淡の違いを確認しながら、とにかく沢山、25色位染めただろうか。
淡色だとグレーのオーバーダイ、という雰囲気が凄く出るけれど、カーキやネイビー、グレーなど濃色になるとグレーの杢糸の濃淡が出にくい。
最終的には、着古したスウェットのようなイメージのチャコールグレーとカーキに決定。
あれ?グレー杢のオーバーダイって判るのかな?いや、このムラ感はその効果が出ているはずだよ、と納得して進行したのだけれど、サンプルが上がってみるとさすがプロの染工場。
ムラのない美しい染め上がり。
かなり凝った素材作りをしているのだが、結果的にはパッと見てわかる人はそうそう居ないさりげない仕上がりになった。
和紙の清涼感、ムラ糸独特の凹凸感、身を潜めながらも時折顔を見せる色の奥行、製品染めならではのかさっとしたタッチ、目の詰まった仕上がり。
能ある鷹は爪を隠すのだ。