Slopeslowはニットウェアに特化したブランドだ。
その特性から、ブランドをスタートした時に、多くの方から春夏はどうするんですか？と聞かれていた(笑)。
秋冬しかやりません！という季節労働も格好良いけれど、無理やりではなく、自分達が必要だと思うもの、作りたいものを作るスタンスであればシーズンを問わずやれることはあると思った。
当然ニット＝横編みがメインではあるのだが、ジャージー素材＝丸編みもニット素材であるので、ジャージーのアイテムをやっても良い。
実は前回のファーストコレクションの準備を進めながら、既に次の春夏に向けてジャージー素材の開発を進めていたのである。
最初に進めていたのがこの素材。古着のとあるワークウェアをヒントに、メリヤス工場に相談を持ち掛けていた。
組織はスムース編みなのだが、この絶妙に昔っぽい中途半端な厚さが編めるスムース編み機が探せるかが一番の課題だ。
丸編みは一つの機械でどんな組織でも編める訳ではないので、組織や糸の細さ、機械のコンビネーションが重要なのだ。
横編みと違い丸編みは機械も大きく、需要の無い機械は場所を取るし、効率が悪いため、処分されていくことも多い。
相談を持ち掛けた工場はユニークなスタンスでオリジナリティのある素材を開発している。
新しい編み機だけでなく、普通処分されてしまう古い編み機も含め、凄い数の編み機を所有していて、その中から作る素材に合わせて編み機を引き出してきて生地を作る、という極めて稀なスタンスで物作りをしている。
相談すると、「出来るかもしれない」と嬉しい返事。古い機械を引っ張り出してくれた。
素材はギザやスビンなどのシルキーな超長綿とは逆の、カサカサしたタッチのコットンが良いと、手編みのニットで使ったものと同じペルー原産のコットンを使うことにした。
ドライ感はあるけれど少しウールのような毛羽が立つ糸なので、毛羽を焼いて抑える加工を加え、試作を開始。
中々思ったように上がらず何度か改良してもらいながら、ようやく思った通りのものが仕上がった。
生地に合わせて、付属のリブも同じ糸で編んでもらい、ベースにしたワークウェアには無いデザインに。ニット同様に自宅キッチンで何色も試染めして、製品染めのカラーを追加した。
苦労しただけあって、気に入った仕上がりになり、定番化を目論んでいる。
それも一重に、懲りずに改良に付き合ってくれた工場の方々のおかげだ。
作り手がいなければ物は作れない。善い作り手がいなければ良い物は作れないのだ。